のどのつかえ・のどの違和感・呑酸(すっぱいげっぷ)・食欲不振・吐気・嘔吐・吐血・胸の痛み・胸やけ・腹部全体の痛み
腹部の痛み・下腹部の痛み・腹部全体の痛み・嘔吐・下痢・便秘
食道はのどぼとけの下ののど(頸部:けいぶ)から胃に至るまでの細長い管状の臓器です。
食道の壁は多層の粘膜で構成され、食道がんはこの一番内側の粘膜に発生します。日本人の食道がんの90%以上はこのタイプ(扁平上皮癌)で、60~70歳の男性に多く発病します。
食道がんの約8割が胸部食道に発生しています。
他には腺癌(せんがん)と呼ばれるタイプの食道がんがありますが、日本人には少なく(10%以下)、欧米人ではこのタイプが60~70%を占めています。生活の欧米化した日本でも今後増加する事も予測され注意が必要といわれています。
食道炎は食道の粘膜が炎症をおこし、肉眼的にびらんや潰瘍が見られるものをいいます。
びらんとは粘膜表面が欠損をおこすもので、内視鏡で見ると、中心が白い苔のようになり、その周りの粘膜が赤くなっています。ときには、出血をおこすこともあります。
一方、潰瘍は粘膜の欠損が下の層に進んで、陥没した状態です。最も多いのは逆流性食道炎です。
ほかにカビの一種による食道カンジタ症、ウイルスによるヘルペス食道炎、サイトメガロウイルス食道炎などがあります。
胃酸を多く含む胃の内容物が食道内に逆流して起こる病態を、胃食道逆流症(GERD)といいます。逆流性食道炎のような症状があるにもかかわらず、内視鏡検査では、食道粘膜にびらんや潰瘍などの異常な病変が見られないものを含め、幅広く総称して胃食道逆流症(GERD)としています。
胃がんは胃炎や萎縮(いしゅく)をおこしている胃の粘膜から発生すると考えられています。
胃の粘膜に萎縮がおこると萎縮性胃炎の状態になり、「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」が発生し、胃がんへと進展していく流れが明らかとなっています。この変化にヘリコバクター・ピロリという細菌が大きく関わっており、感染した状態が続くと、萎縮性胃炎や腸上皮化生をもたらすと考えられています。ヘリコバクター・ピロリ菌を除菌すると、萎縮や胃炎が改善し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のほか胃がんの発生も抑えられることもわかってきました。
胃がんは突然に胃全体に発生するわけではありません。
胃がんの診断・治療を行ううえで、胃上部、胃中部、胃下部の3つの区分に、胃壁の断面を小彎、大彎、前壁、後壁と4つに区分しています。
検診などの普及による早期発見、早期治療の効果により、死亡率は急激に減少しています。
胃ポリープとは、胃の粘膜上皮に局所的に隆起(りゅうき)した病変です。
ポリープには最も多い過形成(かけいせい)性ポリープをはじめ、胃底腺ポリープ、特殊なポリープとして腺腫(せんしゅ)、家族性大腸腺腫症などがあります。過形成性ポリープは発生は30歳以上で年代と共に増加する傾向にあり、がん化することはまれです。大きさが増したりして進行していきます。普通、直径2~3センチどまりです。出血やびらんも多くみうけられます。
急性胃炎は、様々な原因で、胃の粘膜に炎症をおこす病気で、急激に発症します。
浮腫、出血、びらんがみられ、潰瘍を起こしていることもあります。びらんとは粘膜表面に欠損をおこすもので、出血を伴うこともあります。一方、潰瘍は粘膜の欠損が下の層に進んで、陥没した状態です。
みぞおちのあたりの急激な痛みなどがあり、検査の結果、胃の粘膜に異常が認められ、急性胃炎、急性潰瘍をともなうものを急性胃粘膜病変(AGML)といいます。
近年、内視鏡検査が普及し、粘膜の様子を詳しく観察できるようになりました。
慢性胃炎は、胃の腺細胞(胃酸を分泌している腺)が、萎縮(いしゅく)をおこし修復されずに進行していく胃粘膜の病気です。萎縮とともに胃酸の分泌が減少します。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染と慢性胃炎の関係が研究されており、一般に慢性胃炎というと、びらんのない胃炎を指し、この菌の感染によると考えられています。特殊型胃炎の発症は非常にまれです。
潰瘍は胃の粘膜の下にある筋層まで傷つく状態です。胃潰瘍には、急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍があります。
急性胃潰瘍は、浅い不整形の潰瘍やびらんが多発し、慢性胃潰瘍は、円形で単発する傾向があります。ほとんどは早期に治りますが、再発を繰り返すこともあります。40~50歳代に多く発症します。
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃粘膜細胞と粘液中に生息しています。
中高年に感染率が高く、特に胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎の患者さんの感染が多く、十二指腸潰瘍の患者さんではほとんどが感染者と言われています。
この菌に感染した場合、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんにも深くかかわっていると考えられています。高い感染率にもかかわらず、一部の人にしか発症しない理由も不明で、今後の解明が期待されます。
十二指腸の粘膜に潰瘍ができる病気です。胃に近い部分に多く見られます。
十二指腸潰瘍は胃潰瘍とは異なる点が多く、十二指腸の壁は胃壁に比べて筋層が薄いので深く進行し、出血、穿孔(せんこう)を起こしやすい傾向があります。患者さんのヘリコバクター・ピロリ菌の感染率が非常に高く、97%以上の感染率ともいわれています。
十二指腸潰瘍はまわりの組織との境界がはっきりした潰瘍で、粘膜をこえて深く進行します。
20~40歳に多く発症し、ストレスの多い今の時代、増加傾向にあります。
内視鏡検査で見つかる主な大腸の病気についてご説明します。
日本人に急激に増加している病気です。
食生活の洋風化とも関連があると考えられています。早期がんでは、無症状のことが多く、内視鏡検査、注腸検査等を受けないと発見は困難です。
進行がんでは発生部位、進行度によって種々な症状を呈しますが、下血(便に血が混じること)、下痢、便秘、腹痛等が見られます。
しかし、症状だけでは診断は不能であり、心配がある時には早めに検査を受けることをお勧めします。
大腸(直腸)の粘膜にできる隆起物をポリープといいます。
ポリープにはいくつかの種類がありますが、なかでも腺腫性といわれるものはがんに移行しやすいといわれ、また、ポリープの大きさとガン化の率は比例しているため、腺腫性ポリープが見つかったら内視鏡的に切除します。
大腸ポリープのおもな症状は時々病変が便にこすられて血が出るくらいで、痛みはありません。
大腸の壁が弱まり外へ突き出したものを憩室といい、憩室のある状態が大腸憩室症です。
この病気はほとんど無症状で、たいていは治療の必要はありませんが、一割に下痢、便秘、腹痛などが起こります。憩室の中に便がたまり炎症を起こして大腸憩室炎になってしまうと、発熱や腹痛などの症状を伴います。
特にS状結腸の多発憩室では強く症状が出る頻度が高く、時に緊急的処置が必要となる時があります。
原因不明の、直腸に起こった炎症が大腸全体に広がっていく病気で、炎症による下痢と出血のため粘血水様便となります。
また、発熱や貧血の症状もみられ、重症化すると大腸を切り取らなければならないこともあります。
下痢と軽い出血の段階で適切な治療を受ければ症状は消えますが、全大腸型では再発をくり返し、完治が難しいのがこの病気の特徴であり、厚生省の特定疾患に指定されています。
比較的稀な病気ですが、近年増加傾向にあり、日本では2万人強の患者さんが登録されています。
主として小腸に原因不明の非特異性炎症が起きる病気です。慢性の経過をたどり、腸が炎症の結果細くなったり(狭窄)、腸に穴が開いたり(穿孔)すると手術が必要となります。
症状としては粘液便、血便、慢性下痢、腹痛等が認められます。厚生省の特定疾患に指定されています。
大腸を栄養している結腸動脈が閉塞・狭窄することにより、大腸が虚血状態になり、これにより腸炎を生じる病気です。
原因は高血圧、動脈硬化、不整脈、糖尿病があります。症状は突然の腹痛、しぶり腹、下痢、下血で大腸内視鏡検査、注腸検査にて診断がつき、一般的に輸液と安静で治療することにより症状が消失する場合が多い病気です。
細菌、ウィルスが原因で腸炎を生じる病気です。
症状は発熱、下痢、腹痛等を呈します。原因細菌は病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、カンピロバクターなどがあり、原因ウィルスはロタウィルス等です。
診断は上記症状と便培養検査で輸液、安静、及び抗生剤で治療します。
抗菌剤(抗生物質)が原因となり生じる大腸炎で、偽膜性腸炎、出血性腸炎などがあります。
血性下痢、しぶり腹、腹痛の症状をきたし、早急に原因となる薬剤を中止する必要があります。
重症化する場合もあり、発症後すみやかに大腸内視鏡で診断をつけることが重要です。
腹痛を伴う便通異常が持続する病気で下痢になる場合も便秘になる場合もあります。
腹痛は排便後に軽快することが特徴です。若年者にも多く、精神的ストレスと関係することが多いことから、胃腸神経症の側面もあります。
治療は食事療法などの生活指導や薬物療法でかなりの改善が得られますが、壮年以上の年代の方は大腸内視鏡で他に大腸の病気がないことを確認することが重要です。